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生成AI職業特集
AI
金融・経済

生成AIが台頭する時代に「消滅する仕事」と「誕生する仕事」とは?

里見 晃
2023/10/02

日本は世界で3番目にAIの影響を受けるかもしれない?

生成AIの出現で世界の産業は変革期に入ってきたといわれている。米OpenAIの対話型AIチャットツール「ChatGPT」、画像を生成する「Midjourney」の出現は社会的に大きなインパクトをもたらした。これに伴い、今後、全職業の80%が生成AIの影響を受けるだろうと予測されている。

ゴールドマン・サックスのレポートによると、米国と欧州では、現在の作業タスクの4分の1がAIによって自動化される可能性があり、世界では18%が自動化される可能性があると指摘している。そして、日本は世界で3番目にAIの影響を受けると考えられるようだ。


3つのAI技術

AI技術は大きくわけて下記の3つがある。

  • 機械学習・ディープランニング
    データを解析し、統計的手法やアルゴリズムを用いてパターンをみつけ出し、それをもとに未知のデータに対して予測を行うことを目的としている。ディープラーニングは機械学習を進化させたもの。人間の脳に似た人工ニュートラルネットワークを用いた手法となる。人間のサポートを受けることなく、AI自ら学習する。データから特徴を抽出し、その特徴を使って高度な認識や予測を行う。

  • 画像・音声認識
    AIは画像や風景、音声を認識できる。画像から場所を特定したり、医療分野では、X線画像やMRI画像を分析し、異常部分を検出するためにも利用されている。音声を認識して話した言葉をテキストに変換したり、音声コマンドによる家電操作などAIはすでに使われている。画像・音声認識で自動運転やロボット技術、セキュリティ分野で応用されている。

  • 自然言語処理
    自然言語処理とは人間が喋る言葉を理解し、その言葉を生成することができる技術。機械学習、ディープラーニング、自己教示学習などを使用しAIは大量のデータからパターンを学習し、そのパターンを使用してあたらしいデータを解析する。AIは自然言語処理の技術により、質問に答えたり、画像や音声を生成することができるようになってきた。最近のチャットボットは自然言語処理を取り入れることで大きく進化している。


AIの台頭により影響を受ける仕事

今や世界中のあらゆる業界においてAIの活用が広がっている。PwC Japanグループの「2021年AI予測」によると、日本でもここ数年でAI活用の進展がみられているという。AI を業務に導入する企業の割合は2021年には43%と、2020年の27%から16%も増加している。

現在、生成AIは多種多様なコンテンツを生成する機能を備えている。テキストを生成する文章AIであれば、原稿を書くことはもちろん、企画案、ストーリー、あらゆるプログラミング言語を理解し、アプリなどのプログラムまで書いてくれるようになった。

翻訳はできるし、イラストや音楽もAIに指示すればあたらしい作品を生み出すこともできる。OpenAIのタイナ・エランドウ氏らの研究では、プログラミングと文章作成の仕事が生成AIの影響を受けるという。一方で科学や批判的思考スキルを伴う職業・仕事は影響を受けにくいと推測している。

影響されるであろう職種の例としては下記があげられる。

  • 通訳・翻訳者
  • 調査研究者
  • 市場調査員
  • 作詞家・作曲家
  • 動物科学者
  • ライター・作家
  • 数学者
  • 税理士
  • 金融データアナリスト
  • プログラマー・Webデザイナー

フォーブスによると、エランドウ氏の研究の重要なポイントは、生成AIが現在では想像もつかない方法で職場を再形成することが考えられるという。一部の職業は最終的に消える可能性があるとすら述べる。

AmazonのWebサービス・AWSも生成AIに本格参入し、「Amazon Bedrock」を発表した。これでMicrosoft、Google、Amazonと、クラウド3強が出揃った形だ。

Amazonが生成AIで何を目指すのかというと、カスタマーサービス(CS)の領域でビジネスを展開しようとしていることが予測されている。

AmazonのCSは、過去に顧客から受けた連絡の莫大な量の録音データをすべて保存している。世界で進出している国々でCSの録音データをすべて保存しているのだ。それを生成AIに解析させ、AIによるCSを目指しているとされる。世界中のCS業務をAmazonが支配することになるかもしれない。


時代の流れで誕生した「AIひろゆき」

18世紀後半、英国から始まった産業革命は機械が人から仕事を奪った。最近ではインターネットが登場し、産業に変革をもたらした。実店舗が激減しテレビや紙媒体などのメディアに大きく影響を与えた。スマートフォンの登場で誰もがインターネットを使うようになり、生活スタイルが激変した。

変革期にはなくなる職もあるが、あたらしく誕生する職もある。

生成AIの出現で、現在、企業が必要としているのがプロンプト・エンジニアに代表される「AIスキル」を持った人材だ。PWC Japanの「2022年AI予想」によると、「AIスキルの人材不足」についてアンケートをしたところ米国企業は37%、日本の企業は45%が不足と答えている。

現在、世界で俄然注目を浴びているのがプロンプト・エンジニアだ。生成AIの能力を最大限に引き出す高度なプロンプト(文字による指示)を作成できるを持ったエンジニアのことで、海外のメディアでは頻繁に取り上げられている。

OpenAIのライバルで、対話型AI「Claude」を開発するAnthropicはプロンプトエンジニアを年収28万ドル(約4,200万円)から37万5000ドル(約5,600万円)で募集している。

プロントエンジニアは生成AIが定着するであろう数年先にはAIに取って代わられる職となりそうだが、ここ数年は企業からの需要は高いといわれている。

日本でもユーチューバーでもAIを活用したVチューバーが登場し人気となり、視聴回数を稼ぐようになってきた。

たとえば、西村ひろゆき氏公認のVチューバー、「AIひろゆき」は時々ライブ配信を行い、その視聴者数は10万回を超える。話し方も思考もひろゆき氏そっくりだ。

AIひろゆきのほかにも、音声対話型AIを使ってVチューバーにLIVE配信を行わせるユーチューバーも出てきた。すべて無料で作成できるという。

また、一人暮らしの老人向けに話し相手となる、対話型AIサービスを展開する会社も出てきた。AI天気予報士、AIイラストレーターも出現し、AIブロックチェーンゲーマーも出てきたと囁かれる。

株式投資などの金融市場でもAIトレーダーの出現が確認されている。全銘柄の需要をミクロン単位で読み取り短期売買を1日に何千回、何万回と繰り返すという。生成AIの出現で消滅する職種もあるが、それ以上に誕生する職も出てくるのだ。すべてをAIに任せれば遊んで暮らせる夢の時代が到来するかもしれない。


AIが抱えるリスク

現時点では生成AIにすべてを任せるのはリスクがある。最先端のAIは「自信を持って間違える」ことがあり、「権威をもって虚偽を提示」したりすることがよくあるからだ。まだ人間が監視する必要はある。

また、企業が導入する上でも情報漏洩に関する問題がある。顧客情報や社内機密情報が間違ってビッグデータとしてAIに取り込まれてしまうリスクがあるのだ。

IT、金融、ヘルスケア、自動車産業などAIの活用が進んでいる業界においてAIにかかわるリスクをどのように認識し、コントロールするかが喫緊の課題となっている。



Profile

里見 晃
元週刊誌記者。スキャンダルや経済記事を担当した。現在はフリージャーナリストとして、月刊誌、週刊誌、Web媒体で執筆している。暗号資産などWeb3.0領域関連の記事を書く一方で、ラーメンや居酒屋などB級グルメ記事も執筆している。



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