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GMOインタビュー
AI
Web3.0

GMO AIで未来を創るNo.1企業グループへ 内田朋宏独占インタビュー

Shogo Kurobe
2024/03/31

AIで未来を創る No.1企業グループ

Web3.0に加えてAIにも注力するGMOインターネットグループの挑戦
インターネット革命の後半戦として「AI革命」は訪れている——


——「GMO AI & Web3株式会社」は、AIに注力していく観点から2023年5月24日付で「GMO Web3株式会社」より社名を変更する形で現在に至りますが、あらためてGMOインターネットグループとしてAIに注目する理由についてお聞かせください。

内田朋宏(以下、内田)GMO Web3株式会社を立ち上げたのは2022年6月30日で、その年はWeb3.0の年といっても過言ではありませんでした。多くの若手起業家もWeb3.0で企業を行うなどすごく盛り上がっていた時期です。GMO Web3株式会社は、まさにその波に乗るべく設立しました。

しかし、2023年に入るとWeb3.0よりもAIに対する熱の方が強まりました。そこで現状を踏まえ我々は「これからは生成AIの時代だな」と考え、AIに注力することとなったのです。現在の状況というのは、いわゆる『インターネット革命』の前半戦が終わった段階です。

ではインターネット革命の後半戦は何かというと、『AI革命』だと考えています。インターネット革命が始まった年はWindows95が登場した年、1995年です。一方で、AIブームの火付け役となったChatGPTは2022年11月30日に登場しました。

産業革命は55年続くといわれていますが、これに当てはめると、2022年11月というのはちょうど27.5年、折り返しの年なんです。つまり、後半戦に差し掛かったタイミングでChatGPTは登場したわけですが、我々はこれを運命的なものだと感じました。

GMOインターネットグループはこれまでIT企業として戦ってきましたが、今後は『AI企業』にならないと勝てないと考えています。


AIの普及で変わる世の中

——AIの普及に伴い、どのようなことが身の回りで変化すると思いますか?

内田生成AIで何が変わるのかというと、人々の働き方なんです。それは突き詰めるとビジネスの戦い方が変わるということなんですね。直近のGAFAMの決算をみると、共通しているのはレイオフ、つまり従業員削減を行っている点です。そして浮いた資金でGPUに投資を行うという傾向が強まっています。

つまり人件費に費やすよりも、GPUに資金を投じた方が儲かる可能性が高いという考え方ですね。

変化という点では、今後はGoogle検索を利用するのではなく、ChatGPTやAIに尋ねる時代に移り変わっていくでしょう。Googleで検索するよりも、たとえばGoogleが提供するGeminiに聞いた方が早いという時代が来たとしたら、それは我々にも影響してきます。

我々GMOインターネットグループではドメインやインターネット広告等、インターネット検索に関連したビジネスを行っています。極論ですが、検索がなくなってしまうと我々が“岩盤ストック収益”と呼んできた基盤が大きく崩れ去ることになります。

少なからず、AIの登場でそうした可能性が出てきたということで、我々は非常に危機感を感じています。ですので、我々は仕事のスタイルもガラリと変える必要があると考えています。

GMOインターネットグループでは昨年から『AI活用No.1企業グループ』を掲げ、2024年からは『AIで未来を創るNo.1企業グループへ』のスローガンのもと、AIを従業員全員で活用しようとしています。実際、大半の従業員が現在AIをツールとして日常的に活用していて、ChatGPTはもちろん皆が使っています。

先ほどのGAFAMの話に関連すると、米国のハイテク企業ではレイオフのラッシュとなっています。一方、日本は労働基準法により簡単に解雇することはできませんし、GMOインターネットグループの代表である熊谷の言葉を借りれば、我々は雇用責任を強く感じていますので、簡単に従業員を解雇することはしません。

では今後どうしていくかというと、全パートナーがAIを活用できる人材、つまり『AI戦士』に生まれ変わっていかないといけないのです。我々がAIに注目する理由は、我々自身のビジネスが脆くなってしまうという危機感、そして従業員の雇用を守る意味で活用しなければならないという使命感があるからです。


——AI領域でこれがあったら便利だなと思う機能、またGMOインターネットグループとして注力していく部分はありますか?

内田便利なところといったら、やはり生成AIで画像や動画も作れるところでしょうか。現時点の技術では長時間の動画は難しいかもしれませんが、長時間の動画が生成AIで作成できるようになるとさらに世界が変わってくると思います。

だからこそ、昨年エヌビディアの最新GPUを1時間単位で利用できる「ConoHa VPS GPUサーバー」をリリースし、今年2月13日にGPUサーバに100億円の投資を行うというリリースを出しました。

結局、AIは計算力が大事で、そこには高性能なインフラが必要です。我々が培ってきた能力を活かしてビジネスを展開することができる領域であると思います。

GMOとしてまずインフラ領域に注力し、その次にセキュリティに着手すべきだろうと考えています。AIの世界になってもセキュリティは極めて重要で、こちらも需要増に期待が持てる領域だと思います。


——内田様は昨年11月に設立された「GMO教えてAI株式会社」の代表取締役にも就任されましたが、これまで同社にてサービスを展開してきてどうでしたか?

内田社会全体に目をあてると、AIを使う人というのはイノベーター理論でいうところのアーリーアダプターに分類されます。次のアーリーマジョリティやさらにその後の人たちに「AIってこう使うと楽しいんだよ」「便利だよ」と伝えたいんですよね。そういう思いで現在事業を進めています。


AIの利用にはプロンプトの課題が存在

——サービスを通じてどのような収穫や課題を得られましたか?

内田収穫でいうと、AIを使いこなす人というのはそんなに多くないんだなということがわかりました。それは「教えてAI」自体にも改善の必要性があって、こういうことに使いたいというユーザーさんが現れた時にすぐに応えるサイト設計であるとか、さまざまな課題がありますよね。

そうした課題面では、特にプロンプトの問題があると認識しています。現状ですとAIへの指示語がややこしいですよね。ユーザーにとっての障壁の1つになっているのかなとも思います。

我々が提供する「教えてAI byGMO」は、作成したプロンプトを共有することで、ほかのユーザーがそれを参考にしたり改善点を提案したりすることができます。これによりユーザーのプロンプト作成能力の向上に寄与できると考えています。

このほか、シーンにあわせたプロンプトを大量に作成・保存し、いつでも取り出すことができるなど、まさに痒いところに手が届くようなサービスになっています。


——Web3.0領域では市況の改善に伴い各所で取り組みが加速していますが、GMO AI & Web3社としては現在の状況をどのように捉えていますか?

内田市況的な部分でいうと、ビットコイン現物ETFが承認されて、さらには半減期も訪れる年ということでモメンタム的に良い年です。

世界経済の面でも、米国を中心に利下げを早々にも始める可能性がありますので、暗号資産への投資というのは相対的に高まっていくと思います。その結果、機関投資家も参入してくるでしょう。

Web3.0でいうと、まだ一部のアーリーアダプターの人しか盛り上がっていないというのが現状かと思います。Web3.0が広まるためには純粋に楽しいサービスやコンテンツが必要で、ゲームでいえばSTEPNのようなものが出てくると広まる可能性があると考えています。

Web3.0は『分散』を思想として持っていますが、AIは『独占』なんですよね。今AIに注力しているGAFAMなんかは典型的な例でしょう。Web3.0とAIは真逆の存在だよなと思ってずっと面白くみていました。


——現在の状況を踏まえ、GMO AI & Web3社は今後どのような戦略をとっていくのでしょうか?

内田優秀な若手がWeb3.0で起業したら、ぜひ投資したいと考えています。現在もWeb3.0領域でスタートアップを立ち上げた起業家さんに対して、GMOのアセットを活用していただき、成長支援をしています。

我々はグループとして暗号資産取引所やマイニング事業、また海外でのステーブルコイン発行等すでに行っていますが、GMO AI & Web3としては支援の機会があれば投資をさせていただき、Web3.0領域の起業家と共鳴していきたいですね。


パートナー全体のAI人材化はマスト

——GMOインターネットグループとして、2024年中に成し遂げなければならないと考えるAIとWeb3.0領域それぞれの目標・ミッションを教えてください。

内田:我々はAIで「未来を作るNo.1企業をつくる」というスローガンを掲げています。

我々がIT企業からAI企業に生まれ変わるためには、今いるパートナー全体がAI人材化、つまり先ほどお話ししたAIを使いこなせる『AI戦士』になることが必要です。そうでないと外国企業に負けてしまうでしょう。ですので、全員がAI人材になるというのが今年の目標です。

また、グループとしてはAIを活用して業務コストの削減を行っていて、2023年4月〜11月の実績では、96,000時間の業務削減を達成しました。2024年は具体的な金額として、グループ全体で18億円相当の業務効率化を目標として掲げています。それから、「AIインフラで成果を出す」という目標もあります。

Web3.0でいうと特定の定めているものはありませんが、種蒔きのようなことはしていますので、グループとしてここだと思う領域で大きく動き出していきたいと思います。



Profile

内田 朋宏Tomohiro Uchida
GMO AI&Web3株式会社 代表取締役
2012年にGMOインターネット株式会社(現:GMOインター ネットグループ株式会社)入社し、グループ投資戦略室にて、仲間づくり(グループジョイン)やその他の投資プロジェクトに従事。2021年にグループ投資戦略室長に就任。 GMO Web3株式会社(現GMO AI & Web3株式会社) 代表取締役。2023年よりGMOインターネットグループ株式会社グループ執行役員グループ投資戦略室長(現任)。 

Shogo Kurobe