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金融・経済

【NEWS】理研、国産量子コンピュータ初号機の愛称「叡(えい)」に決定

里見 晃
2023/10/09

理化学研究所(理研)は5日、国産超伝導量子コンピュータ初号機の愛称を「叡(えい、英語表記“A”)」に決定したことを発表した。

理研科学研究所量子コンピュータ研究センター(RQC)は今年3月27日から量子コンピュータをクラウドで公開し、外部から利用ができる「量子計算クラウドサービス」を提供している。

RQCでは4月より愛称の公募を開始。寄せられた3,781件の愛称のなかから理研グループによる選考の上、決定した。

「叡」は聡明さを表し、量子コンピュータの情報処理における卓越性・先進性を表すとともに、英語名をアルファベット順の最初の文字である「A」とすることで、国産量子コンピュータ実機開発の第一歩であることも表現しているという。


▶︎理化学研究所より引用


叡はRQCの中村泰信センター長を始めとした共同研究グループにより開発が進められてきた。超伝導量子ビット集積回路技術のほか、パッケージ実装、マイクロ波制御・読み出し配線、マイクロ波変調復調装置、デジタル制御エレクトロニクス、制御ソフトウェア、量子ゲート回路、量子誤り訂正、量子アルゴリズム、量子応用計算といった、さまざまな技術レイヤーにまたがり、述べ100人以上の研究者が開発に参加している。

叡で採用されている超電導方式は、超伝導材料を用いた電子回路上で、ジョセフソン接合によるトンネル接合素子を用いて量子ビットを実現している。ゲート型量子コンピュータのなかでは将来有力とされている方式の1つだ。

理研では2001年に、巨視的量子コヒーレンス研究チームを発足。量子情報科学に関する研究を開始した。2021年から中村博士のもと、量子コンピュータ研究センターを発足し、研究を継承してきた。

また、同日5日には、富士通株式会社(富士通)と理研が共同で設立した「理研RQC-富士通連携センター」において、叡の開発ノウハウをベースにしたあらたな64量子ビットの超伝導量子コンピュータと世界最大級の40量子ビットの量子コンピュータシミュレータを連携させた高精度の計算ができるハイブリット量子コンピューティングプラットフォーム「Fujitsu Hybrid Quantum Computing Platform」を、企業や研究機関向けに提供を開始すると発表している。

量子コンピュータではIBMやGoogleが先行しているが、実用化には依然として技術の進歩や莫大な投資を要する。IBMは量子コンピュータに関するロードマップの拡張において、2025年に4,000量子ビット級のシステムを実現する計画を発表している。またGoogleは2029年までに100万量子ビットを搭載した量子誤り訂正ができる量子コンピュータを開発するとしている。

理研には既存インフラと相性が良いというメリットがあり、実用化に向けた一発逆転を目指している。

参考:発表
画像:Shutterstock

里見 晃