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【NEWS】FTX元CEOバンクマン=フリード被告が貸借対照表の改ざんを指示 元側近が公判で証言

里見 晃
2023/10/12

昨年破綻した暗号資産(仮想通貨)取引所FTXの創業者で元CEOのサム・バンクマン=フリード(Sam Bankman-Fried)被告が詐欺罪などに問われている裁判で、側近だったアラメダ・リサーチ(Arameda Research)の元CEOであるキャロライン・エリソン(Caroline Ellison)氏が同氏より貸借対照表などを改ざんするよう指示を受けたと証言した。

バンクマン=フリード被告は2件の詐欺罪と5件の共謀罪に問われているが無罪を主張し、FTXの運営でミスはしたが顧客資金は盗んでいないとの立場を崩していない。

エリソン氏は10日から11日に行われた公判に証人として出廷。FTXが昨年11月に破産をするまでの最後の日々について語った。

エリソン氏はFTXの顧客が受けた損害について「言葉では表現できないほど残念に思う」と言及。また、FTXの崩壊により自身が抱えていた「恐怖」が消え、「もう嘘をつかなくて済むと思うと安堵した」と述べた。

検察はバンクマン=フリード被告がアラメダを支え、不動産を購入し、米国の政治運動に1億ドル(約150億円)を超える寄付をするために数十億ドルの顧客資産を略奪したと主張した。エリソン氏は自身の詐欺罪を認め、マンハッタン連邦検察局に協力することに同意したバンクマン=フリード被告の側近のうちの人だ。

エリソン氏は、2022年の暗号資産市場が低迷するなか、「貸し手を寄せ付けないようバンクマン=フリード被告がアラメダの貸借対照表を改ざんするよう指示をした」と証言した。ジェネシス・グローバル・キャピタル(Genesis Global Capital)など暗号資産関連業者に送られた貸借対照表にはアラメダが約100億ドル(約1兆5,000億円)を借り入れたことが隠蔽されていた。エリソン氏によれば、その資金はFTXの顧客資金だという。

また、バンクマン=フリード被告から昨年6月、ローンを返済するためFTXにおける基金の信用枠から資金を引き出すよう指示されたとも語った。さらにエリソン氏は、バンクマン=フリード被告が「顧客に嘘をつかない」「顧客資金を盗んではいけない」などといった金融業者の規則を遵守していないと証言している。

バンクマン=フリード被告は功利主義者であり、重要なことは「最大多数の人々に最大の善を行うこと」だと考えていたという。その考え方に同調することで時間が経つにつれ間違ったことだとわかっていても、バンクマン=フリード被告の指示に従うことへの抵抗感がなくなっていったという。

また、バンクマン=フリード被告は「賢く、有能で、やや風変わりな創業者」というイメージを作るため、外見と髪型を「非常に重要な価値がある」と考えていたと述べた。暗号資産業界のカリスマ像のすべてが作り物だったことが露呈された形だ。

エリソン氏はビットコイン(BTC)を始めとした暗号資産価格が急落し、アラメダの資産価値が暴落するにつれ、融資返済に使われる資金がFTXの顧客資産から出ているという認識を持ち「絶え間ない恐怖の状態」だったと述べた。

裁判では昨年のFTX破綻直前、再興のためにバンクマン=フリード被告とブレインストーミングをした際、サウジアラビアのムハンマド・ビン・サルマン皇太子からの出資を模索していたことも明らかにされた。さらに、米SEC(証券取引委員会)など規制当局に対して競合のバイナンスを取り締まるよう仕向け、市場シェアを拡大しようと目論んでいたという。

裁判は最大で6週間続く予定で、今後もあらたな事実が明らかになる可能性がある。

参考:裁判レポートロイター
画像:Shutterstock

里見 晃