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ビットコインの黄金のイメージ
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金融・経済

“黄金の1ヵ月”を過ごしたビットコイン 次章は波乱傾向の強い11月へ

Shogo Kurobe
2023/11/02

10月はビットコインにとって“黄金の1ヵ月”

今年も早いもので残り2ヵ月となった。世間の目は早くも来年の動向に移っていることだろう。

暗号資産市場でいえば、来年はビットコイン(BTC)の半減期を控えている。その前に、10月にはSEC(米証券取引委員会)がビットコインの現物ETFを承認する可能性が高まったことで、市場は盛り上がりをみせた。

ビットコインの半減期前後約1年は価格が上がりやすい傾向にあることも踏まえると、いよいよ機関投資家を含め仕込み時が本格化し始めたといえる。


暗号資産市場は“冬の時代”と呼ばれる厳しい時期を乗り越えつつある。その証拠に、10月のビットコインの収益率は前月比プラス27.3%となった。

▶︎ビットコインの月ごとの変動率(coinglassより引用)


これが特異なようにもみえるかもしれないが、実はそんなことはない。10月という月はビットコインにとって近年最も相性の良い“黄金の1ヵ月”なのだ。

暗号資産統計サイトのcoinglassのデータを参照すると、2019年から2023年まで、5年連続でビットコインは前月比プラスを記録している。2013年から2023年までをみても、マイナスになったのは2014年と2018年のわずか2回のみだ。同様のパフォーマンスを示している月は2月のみとなっている。

反対に、9月については相性が悪い。10月のデータとは打って変わって、こちらは2017年から2022年まで6年連続のマイナスとなっている。ここ3年ほどでいえば、ブームの最盛期にあったDeFiやNFTにおいて問題が発生したり、関心度が落ち着いた月が9月だ。

そのため、見方を変えれば価格が下落した翌月に再度市場へ参加する投資家が多いことを示している。そして近年は冬から春にかけて乱高下する傾向もみられる。株の世界でも「秋に買い、春に売る」といった言葉があるように、本来であればまったく関係のないアセットクラスである暗号資産においても、似たような状況が形成されつつある。


マイナス36%からプラス449%まで、大幅に動く“波乱の11月”

そして気になるのが11月の市場動向だ。好調な10月を終え、投資家の動きが買い増しに向かうのか、それとも手仕舞いに回るのかは気になるところだろう。

傾向でいえば、11月という月は2桁パーセントの変動となることがほかの月と比べても多い。2013年から2022年までの10年でみると、1桁パーセントの変動に落ち着いたのは2016年と2021年だ。2016年はビットコインにおける2回目の半減期が終わり少々過ぎた頃、2021年はビットコイン先物ETFが承認され、過去最高値を記録した直後。どちらも市場の過熱感が落ち着き、様子見ムードが広がっていた時期だった。

11月において、この10年で最も大きなプラスとなったのは2013年で、プラス449.3%。一方、最もマイナスとなったのは2018年でマイナス36.5%だ。

2013年はキプロス危機が発生した影響もあり、資産保護の兼ね合いでビットコインへの注目が高まった。また、中国の大手検索サイトであるバイドゥ(百度)がビットコイン決済に対応するなど、急激に需要と露出の機会が高まったことで価格も高騰した形だ。

2018年はハッキング事件など不祥事が相次いで発生したほか、Googleなど大手が暗号資産関連の広告を禁止したり、規制面でも締め付けが強化されたことを受け年初から価格は下落。11月にはビットコインキャッシュ(BCH)の分裂騒動も起き心象が悪化していたといえる。

2023年でいえば、ビットコイン現物ETFの承認観測が出始め、その期待感も相まって、現在はビットコイン先物ETFが承認される1ヵ月前、2021年9月頃に少々状況が似ていると筆者自身はみている。

また、SECが現在置かれている立場やこれまでの審査状況も加味すると、早ければ11月初旬、遅くとも来年1月にはビットコイン現物ETFが承認されるのではないかと考えている。審査スケジュールなどを加味すると12月の承認は11月と比べて低いのではないだろうか。

ビットコイン現物ETFが承認されたとしたら、ビットコイン価格は当然上昇すると見込まれている。ビットコイン先物ETFが承認された際の上場や過去の市場傾向だけで話を進めれば、2桁パーセントの変動幅となる可能性が十分に考えられる。

一方、承認観測は出たものの、進捗がなく焦らされるようなことがあれば買い疲れが生じて手仕舞いの動きが加速する可能性もある。もともと12月は利益確定の売りが出やすいため、それも相まって先んじて動き出す投資家もいるだろう。


不思議な因果が絡むも最もパフォーマンスが良いQ4

四半期ごとのデータを振り返ると、Q4(10月〜12月)は最もビットコインが利益をあげる期間であることがわかる。Q1からQ3に比べてマイナスを記録することは少なく、安定してプラスを重ね続けている。

▶︎ビットコインの四半期ごとの変動率(coinglassより引用)


先述した通り、10月はビットコインにとって黄金の1ヵ月であり、そして12月は利益確定の売りが出やすい。そのため、10月と11月でいかに貯金を作っておくかが四半期のパフォーマンスを左右する。

こうした価格動向の裏には不思議な因果が絡む。具体的には、大きな事件や出来事が発生しやすいのだ。昨年破綻し、まだ記憶にもあたらしいFTXの崩壊も11月に起きた。また、SECによるリップル社の訴訟や、中国におけるブロックチェーン推進の方針が示されたのも10月から12月にかけて。こうした出来事は良くも悪くも暗号資産市場に多大な影響を与えている。今年でいえば、ビットコイン現物ETFの存在はまさにこれと重なる。

10月にビットコイン価格は大幅に上昇し、その勢いが11月にもつながるかどうかはビットコイン現物ETFの進捗がカギを握る。そして、万が一ビットコイン現物ETFが11月に承認された場合には、2桁パーセント以上の価格上昇が起こる可能性が考えられる。その一方、12月になれば過熱感も落ち着き利益確定の売りが出ることで一時的に価格を落とすことも想定される。

結果は蓋を開けてみなければわからないが、暗号資産市場ではQ4に何かが起こる。この時期に暗号資産を取引する際には、これらの傾向を踏まえた上でポートフォリオを構成した方が良さそうだ。

画像:Shutterstock



Profile

◉Shogo Kurobe
2018年より暗号資産業界に参入。学生時代に文章を学び小説執筆などを行ってきた経験から暗号資産やブロックチェーンに関する記事執筆及び企画・編集に携わる。株式会社J-CAMで2022年4月より副編集長に就任し現職。2023年3月に「Iolite(アイオライト)」創刊。



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