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金融・経済

大阪万博キャッシュレス化 垣間見える日本の思惑と万博の課題——

Noriaki Yagi
2023/10/27

—はじめに

2025年4月13日から10月13日に開催が予定されている大阪・関西万博(2025年日本国際博覧会)。外務省によれば、世界の153カ国・地域及び、8つの国際機関が参加を表明しているという。
「いのち輝く未来社会のデザイン」というテーマで行われる本万博は、世界規模の文化祭といっても過言ではない。

会場の大阪ベイエリアに位置する「夢洲(ゆめしま)」という人工島には、2,800万人を超える入場者数が予想され、万博後には「大阪IR構想」によってホテルや商業施設が誘致される予定だ。万博によって生まれる経済波及効果額は、2兆円以上になると予想されている。



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次世代テクノロジーや金融・経済のトピックを題材とするビジネス誌、「Iolite(アイオライト)」の編集長が、今話題のトピックと最前線を追います。


—1970年、日本が世界に示した技術力と未来



1970年、高度経済成長の真っ只中に「人類の進歩と調和」をテーマとした万博が大阪で行われた。今から50年ほど前に行われた万博で発表されたのは「リニアモーターカー」や「電気自動車」、「携帯電話」などだ。50年の時を経て、今ではすべてが実社会で活用されるようになっている。76ヵ国、6,500万人が参加したともされる万博で、世界に向けて日本の技術力とビジョンは強いメッセージを残したことだろう。



—遅れている海外パビリオンの建設と膨れる会場建設費



日本の存在感を示す良い機会ではあるものの課題も多いようだ。設計変更や資材高騰、人手不足を理由に、当初予定されていた会場建設費が1,850億円から2,350億円に増額された。今回が2度目の増額になるという。これを受けて、現時点で算出されている運営費800億円についても上振れの懸念があるようだ。

増額された建設費は政府と大阪府・市、経済界が均等に分担するとされ、税金の投入も必須となるようだ。経済界は負担する783億円のうち700億円を企業からの寄付を含めて確保しているとしたものの、残りの不足分は1,970年の大阪万博収益金で発足された190億円規模の基金から捻出を検討しているようだ。

加えて、出展を表明している海外パビリオンの遅れが生じている建設を日本が代行して、建設費を肩代わりする可能性も浮上しているようだ。通常、出展する国が自前で費用を負担し、自国の技術を披露する場所でもある万博で、このような対応が必要であるかは疑問点も多い。



—主要な取り組みの1つ 「EXPO 2025 デジタルウォレット」

もはや日本特有の文化でもあるかのような、現金至上主義にようやくメスが入りそうだ。今回行われる万博の会場内では原則現金の決済が不可とされ。キャッシュレス決済が利用できない人向けには、プリペイドカードの販売が行われるという。万博が軸となり、日本国内のキャッシュレス推進に向けて先陣をきった様相だ。

また、ブロックチェーン技術を基盤とした「EXPO 2025 デジタルウォレット」の提供もされる。協賛・提供はブロックチェーンやNFT等に関する事業を手がけるハッシュポート(HashPort)。サービスは11月1日より開始するとのことだ。主な特徴としては、「ウォレットID基盤」、「SBTデジタルパスポート」、「Web3.0ウォレット」という3つの機能を持っている。


▶︎ハッシュポート発表より引用


ウォレットID基盤

大阪・関西万博において提供される独自の金融サービスである電子マネー「ミャクペ!」や、ポイントである「ミャクポ!」、万博独自NFTである「ミャクーン!」について、単一IDで登録・ログインを可能にする。


SBTデジタルパスポート


第三者に譲渡することができないSBTを利用し、SBTデジタルパスポートと称し身分証機能を搭載する。SBTデジタルパスポートを通じてユーザーは会場内外の各種サービスにおいてパビリオンや自治体とシームレスに連携することが可能。

Web3.0ウォレット


パビリオンや自治体連携で発行されたSBTやNFTを保管する役割を担う。

EXPO 2025 デジタルウォレットでは、パレットチェーンを主要な利用チェーンとして想定しているとのことだが、単一チェーンの活用で起こり得るリスクを加味して、今後ほかのチェーンに対応する可能性はあるだろう。



—多様な決済インフラの提供



EXPO 2025 デジタルウォレットを使った決済以外にも、国内外約60の決済ブランドに対応できるように、飲食店等でよくみかける決済端末の「stera terminal」と「TWINPOS Sx」がセットで1,000台設置されるようだ。また、キャッシュレスシステムの運営は三井住友銀行、りそな銀行、SBIホールディングス、三菱UFJ銀行が行うとされている。



—まとめ

日本のキャッシュレス比率は30%程度とされ、米国の55%、中国の83%に比べると大きく下回る。

単純に海外からのインバウンドが見込める環境で、なめらかな決済に対応することでより高い経済波及効果を生むことを目的とするのはもちろんのこと、これを機に進められるキャッシュレス決済及び暗号資産ウォレットの普及は、国内の暗号資産業界に大きな推進力を生むことになるだろう。

EXPO 2025 デジタルウォレット活用を促すマーケティングに官民一体となって注力することを期待したい。

画像:Shutterstock



Profile

◉Noriaki Yagi
大学在学中に飲食業務に従事。その経験から、飲食店のコンサルティング事業及び、アミューズメント領域への人材派遣事業を立ち上げ、代表に就任。同時に自身のブランドを確立させる目的からSNS運用を始める。SNSの運用では、合計フォロワー数1万人を達成後に認知度の拡大を受け、自身のアパレルブランドを立ち上げる。2021年9月に株式会社J-CAMに入社。YouTubeやTwitter運用に従事した後、2022年4月より編集長に就任。2023年3月に「Iolite(アイオライト)」を創刊。



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