logo
ログイン会員登録
記事詳細 Topバナー Iolite 5月号Amazon
記事詳細 Topバナー Iolite 5月号Amazon
編集後記Vol3
Web3.0
NFT
暗号資産

Proof of Possibility Iolite vol.3 編集後記

Noriaki Yagi
2023/08/02

Editor’s Note
「持たざる者が持っているもの」

「最後に握手してもらってもいいですか?」
目をキラキラさせた青年にいわれた一言に、しがない編集者である私は恐縮至極だった。そして同時に、暗闇でろうそくの火をみつけたような高揚感を感じた。


6月28日から3日間、「IVS Crypto 2023 KYOTO」のメディアパートナーとして、Iolite(アイオライト)もイベントを盛り上げるサポートをさせていただいた。もともとIVSは、2007年からスタートアップ企業の経営幹部を集めるカンファレンスの主催等を行なっている。

昨年、沖縄で開催されたIVS参加当時は、編集長就任後3ヵ月といったキャリアで、Web3.0領域の知識も人脈もほとんどなかった。私の目には登壇者が雲の上の存在のような遠く離れた存在に映り、「いつか弊社のメディアもメディアパートナーとして参画し、自分もパネルディスカッションに参加したい」と思ったことを覚えている。

正直なところ、昨年は雑誌の入稿業務が重なり、代表と那覇空港でソーキそばと島らっきょうをオリオンビールで流し込み、飛行機に駆け乗った記憶しか残っていない。

しかし今年は、イベントの中日に代表と共に時間を忘れて京都の割烹料理に舌鼓を打てた。時間の流れがまったく違った旅先の思い出が2つもできたIVSには感謝している。

サイドイベントのパネルディスカッションの議題は、「Web3.0領域に入ったきっかけ」や「Web3.0領域の面白いと思うところ」など。学生主体のイベントということもあり、参加者の8割以上が学生であったため、私の学生の頃を思い返しながらどんな話ができるかふと考えた。

私の学生時代はちょうど自己啓発系のビジネス書が盛り上がりをみせていた時期だったと記憶している。よく友人が昨晩読んだのであろう本の話をしてくれた。

「PDCAサイクルをいかに早く回すかが重要だ」とか、「資産家になるには2つ方法がある」といったありがたい話だったと思うが、それらを聞き流して見城徹氏が書いた著書「たった一人の熱狂」をすり減るくらい読み返し、勤めていた飲食店の前年同月比をクリアすることばかり考えていた。

それだけ真剣に考えて行動していれば結果は伴ってくるもので、とある飲食店に勤めていた4年間、前年同月比を1度も落とさなかったことは誇りに思う。

時には料理を知らない若者が、「これはお客さんにとって優しくない。作り直してほしい」と30以上も年齢が離れた料理人に盾突き、調理場の空気を最悪にしたこともあった。店の旗持ちを任されながら刺身を引き、1日200貫以上の寿司を握る練習を1年間していたのもちょうどこの頃だ。

何を生き急いでいたのか。狂っている要素の方が多い気もするが本当に熱狂していた。若さや無知ゆえの熱を帯びた“狂い”は必ず武器になると思う。

現在32歳と大した経験を積めるような人生は送っていないかもしれないが、昔から迷ったら腹を括って飛 び込むルールを自分の中で決めている。高さ10mのハードルを生身で飛び越えようなど誰も思わないだろう。

ただ、1mのハードルなら超えられる可能性があるかもしれないと迷う。迷いは可能性の証明であると思う。そこに可能性があるなら挑戦してみれば良いと思う真意もここにある。

今でも鮮明に覚えているが、私が編集長就任後初めての取材で、北海道日本ハムファイターズの現監督である新庄剛志さんのNFT発表記者会見に行ったことがあった。

1度は耳にしたことのある大手メディアの 方々が100名以上参加していた有名ホテルの宴会場で、最後の質問時間にど素人だった私は堂々と手をあげた。NFTの知識など当時は付け焼き刃で、大した質問など持っていなかった。

彼は確実に僕の目をみて「どうぞ」と指してくれたが、結果的に司会の方が指名したのは著名なメディアの記者ばかりだった。

事前に質問者が決まっていたのか真相は定かではないが、私にとっては質問ができたかどうかより緊張を押し殺して挑戦できたことに価値があった。これからメディアの編集長として、著名な方々の取材を行うのに不要なプライドと恥じらいを持っていたら事を成せないと思っての行動だったのだと思う。

近頃仕事を通して、成功や成果は運であると思うことが多くなった。身を滅ぼす無謀な挑戦は進めないが、挑戦がもたらす人生の厚みは人間が人間たらしめる重要な要素の1つだと感じている。

IVSのサイドイベントでのパネルディスカッションが終了した後、「1つだけ聞きたいことがあるのですがいいですか?」と勇気を出して声をかけてくれた青年の熱狂は、私だけではなく多くの人をポジティブに巻き込むことになるだろう。

近い将来、今度は仕事でまたご縁をいただけたら何よりだ。

Noriaki Yagi