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GIANT KILLING Vol.3杜瑪
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Web3.0セキュリティ企業「KEKKAI」 若きCEO・Danny(杜瑪)が事業のビジョンを激白

PRIolite 編集部
2023/09/28

本邦初公開 次なる戦略を本誌に語る

新進気鋭のWeb3.0セキュリティ企業「KEKKAI」を率いる若きCEOが、起業の経緯、そして事業の新情報まで激白。


NFTを盗まれた時、ユーザーを守らなければと決意

——Web3.0領域や暗号資産に興味を持ったきっかけを教えてください。

杜瑪:僕は2019年に早稲田大学に入学したのですが、そこで朝日教授の授業を受けたのがきっかけです。彼がマスクネットワークのCEOだったSUJIさんと知り合いで、当時ブロックチェーンに関する講義を行っていたのですが、それを聞いてブロックチェーンという技術に興味を持ちました。マスクネットワークとは現在、非常に良い関係を築けています。

僕は2017年に今とは違う1社目の起業をしました。ですが、当時はブロックチェーンという名称を聞いたことがある程度で仕組みはまったく知りませんでした。でも、大学での講義を受けてから、実際にブロックとブロックがどのようにつながって証明できるかなど、授業とは別に自分自身で学び進めるほど、ブロックチェーンというものに興味を持ちました。

2021年末にブロックチェーンのコンサルティングをやろうと思い、2022年にNFTやFTのスマートコントラクトをノーコードで書ける、しかもパラメーターの調整もできるといったサービスで起業しました。

当時、企業のWeb3.0領域進出の支援などをやっていたのですが、そろそろ自社製品を作ろうと思ったんですね。ただ、実際に資金調達に動いてみたら、全然投資家受けしませんでした。そのため、しばらくはコンサルティングをしながら自社製品の方向性を整理していましたね。

——セキュリティ領域で事業を起こそうと思ったきっかけを教えてください。

杜瑪:ある日、当時の価格で60万円くらいのNFTを盗まれてしまったんです。その時に無力感のようなものを感じた一方で、僕のような個人ユーザーを守らないといけないし、盗難というのは解決しなければならない問題だと思ったんです。

その際、詐欺を回避するサービスを探したのですがみつかりませんでした。であれば、自分たちでやろうという決断に至ったんです。そのような市場環境をチャンスに感じたのも大きかったですね。

その後、なんとかNFTの盗難を回避できる方法はないかと考え研究を始めました。今のプロダクトができ、そして開発が落ち着いた2023年1月に「KEKKAI」をスタートしました。

日本は国際社会において比較的保守的であるといわれていて、サービスや新規事業を始める時にセキュリティを重視するという特性があります。その割にはセキュリ ティ面での課題が山積みだと思いました。

Web3.0の新規サービス担当者は資産の盗難リスクをわかっていますので、そこにニーズが発生します。また、日本の企業はセキュリティ面での予算を最初から確保していますし、現状を踏まえればやっぱりチャンスが転がっていますよね。


「ブラウザ」「保険」「ポートフォリオ管理」「監査」
大きなプロダクトを続々提供

——KEKKAIがユーザーや技術者から評価される理由、そしてほかのセキュリティソリューションと差別化している点を教えてください。

杜瑪:ポイントは2点あって、従来多かった企業向けではなく、個人の取引を毎回チェックする点と取引相手のセキュリティもリアルタイムでチェック可能な点が差別化のポイントとなります。

KEKKAIは今年1月にリリースして、累計で約3万ダウンロードにも達しました。僕たちは多くのチェーンに対応することに注力していて、現状さまざまなチェーンユーザーに対してサービスを提供できています。

現在、競合他社が最大で十数種類しか対応できていないのに対し、僕たちは110のチェーンに対応しています。また今後の話になりますが、セキュリティに特化したブラウザを提供することも計画しています。開発も進んでおり、アプリももう完成しました。このプロダクトも大きな差別化の要因になると考えています。

ブラウザに着手する理由としては、まず僕たちのサービスを利用しているユーザーは必ずウォレットをインストールしています。そしてパソコンやスマートフォンで暗号資産やNFTを扱う時、多くの場合、最初にブラウザを開きますよね。つまりこの両者は依存関係にあります。

KEKKAIを利用する時もまずブラウザを開く必要があります。だったら、僕たち自身がセキュリティも利便性も高めたブラウザを提供すればいいじゃないかという発想です。現状ウォレットに標準で搭載されているセキュリティ機能は十分ではないと僕たちは考えています。

Web2.0領域のサービスで、たとえば支払いはPayPay、認証はGoogleアカウント認証のようにそれぞれがわかれていますが、Web3.0では良くも悪くもウォレットですべてが完結します。支払いとアカウント認証に加えて、資産管理を同じサービスで完結しているということは、それだけ資産が盗まれたり悪用されるリスクが高まるということです。

だからこそ、ゆくゆくは支払いとアカウント認証の機能をあえてわけるという、あたらしい概念を作りたいと考えています。

そもそもWeb2.0のサービスと類似しているウォレットはほとんどありません。そしてWeb2.0のユーザーをWeb3.0のマーケットに移動させるには、まず安全性を高めないといけないでしょう。将来的には利便性と安全性を模索しつつ、ポータルサービスを展開することも検討していきます。

——今後提供予定のプロダクトがあれば教えてください。

杜瑪:先ほどお話したブラウザは今年10月には出したいと考えています。加えて、3つ大きなプロダクトのリリースを予定しています。

まず、「Web3.0保険」というのを考えています。現実世界では保険がありますよね。たとえば車など事故を起こしたら保険でカバーできます。実はNFT領域でも保険はあるのですが、あまり使われていません。そこで、将来的にはKEKKAIユーザー向けに保険サービスの提供も予定しています。

デジタル資産の保険ということで、まずは既存のプロダクトにビルドインする形で実装する想定で、大手保険会社さんと協議も進めている状況です。

2つ目に「パーソナルセキュリティダッシュボード」というウォレットのポートフォリオを管理するプロダクトを現在開発しています。取引や資産運用履歴などを確認できる機能を搭載するほか、リボーク機能やトランザクション履歴のなかで詐欺が疑われるものを取り除くといったセキュリティ面を重視したものです。

ウォレットのモニタリングも可能で、資産の移動がある際にメールで通知が来る機能もあります。セキュリティを重視したポートフォリオプロダクトとして、こちらもブラウザのリリース前には発表する予定です。

最後に国内を中心に監査事業を行います。現在2方向で進めており、まずは小規模プロジェクト向けに認証機能を付けるサービスを提供予定です。これはKEKKAIで認証することで、プロダクトの安全性を担保するサービスとなります。

もう1つは、大手向けサービスです。ウォレットを構築する大手の監査をする予定です。現在、次の資金調達に向け動いているのですが、目的は監査サービスのセールスと研究開発費用の拡充です。資金調達に関しても大手と話を進めていたりしていて、近日発表できると思います。

▶トランザクションシミュレーションによるリスク分析

▶今年2月に資金調達を実施

▶コードが読めない人でも取引内容を理解できるUI


AIは“ツール”Web3.0は“概念”
両者を有効に活用して5億人のオンボーディングを目指す—

——今後の事業を多角的に展開する上でAI領域へのピボット、またはあたらしいユースケースは考えていますか?

杜瑪:ちょうど最近はAIに触れていて、先日ハッカソンで賞を取ったのも「AI×Web3.0セキュリティ」のプロダクトでした。実際に使ってみると、やっぱりAIは便利だなと思いましたね。

僕はあたらしい技術で使えそうなものは積極的に取り入れていくタイプです。事業にシナジーがあるのならすぐに採用したいと思っています。その分野の専門家もすぐに雇いたいタイプですね。すでにAI×Web3.0セキュリティの監査事業を行うべく、助成金の申請も出しました。

AIを使うことでWeb3.0のセキュリティをより効率的に高めると同時に、コストを下げることも可能になります。唯一課題としては、AIのセキュリティというのはいわゆるGPTを使うのでプライバシーの問題があります。この問題の解決は必要であると考えています。

AIとWeb3.0をそれぞれ2つの領域として考えている人が多いのですが、僕自身の考えは少し違います。というのも、AIはあくまでもツールで、Web3.0は概念なんです。そこには領域という考えはありません。

以前AI系のイベントに行った際、ピボットを考えているのではないかと疑われたりしたのですが、実際はそうではなくて、現在の事業を大きくしたり改善するための方法をみつけるために行ったに過ぎません。どこまでいってもAIはやはりツールだと考えています。

——最後に今後の展望についてお聞かせください。

杜瑪:KEKKAIでは主に3つのことを目指して動いています。1つ目が、ポータルアプリとしての発展です。Web3.0にどんどん人を取り込んで、5億人のオンボーディングを目指します。KEKKAIが100%安全なWeb3.0領域への“入り口”と認識される存在になりたいですね。

2つ目が、トークンを含めたエコシステムの構築です。たとえば「KEKKAIネットワーク」を展開することも見据えています。

3つ目に株式上場です。時間軸としては、2年後までにトークンやネットワークを進め、そして5年後に株式上場です。そのために法的要件を含め、必要な準備を進めていきます。これらに伴って、コンセプトは異なりますが、エンタープライズ向けにスマートコントラクト等の監査事業も取り組む予定です。

個人としては、やはり学生の身分でもありますのでしっかりと学校を卒業したいと考えています(笑)。現在は休学中ですが、それぞれの事業がしっかりと回り僕が少しの間離れても問題ないなと思ったら復学したいですね。

卒業後は学んだことをもとにあらたな事業を起こしたいです。また、個人投資家としてVCを立ち上げる夢もあります。学生起業家を育てて、手助けをしていきたいと思っています。



Profile

Danny-杜 瑪(To Ma)
株式会社KEKKAI CEO 高校卒業後、中国から来日し、大学在学中に株式会社ユニスマの2社を設立。2023年1月には株式会社KEKKAIを設立し、ブロックチェーンセキュリティーソリューションの提供等を展開する。


株式会社KEKKAI
2023年設立のWeb3.0領域におけるセキュリティ会社。現在は、トランザクションのシュミレーション分析により危険検知ができるWeb3.0セキュリティプラグイン「KEKKAI」や、NFT詐欺検出・取引シュミレーションができるAPI・SDKサービスをリリース。今後は現状のサービス向上と、さまざまな角度からユーザーのセキュリティ性改善のための製品をリリースし、業界全体の環境改善に貢献。
【HP】https://kekkai.io/



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