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NTT Digital 取締役CISO 遠藤英輔氏 「scramberry WALLET(スクランベリーウォレット)」を語る——

Shogo Kurobe
2024/03/28

本格始動するNTT Digitalの今後の展望と未来

2022年に設立されたNTTドコモのweb3を推進する子会社「NTT Digital」

web3領域の入り口となるデジタルウォレット「scramberry WALLET(スクランベリーウォレット)」のリリースを皮切りに今年いよいよ本格始動。NTT Digitalの取締役でありサービス開発に携わっている遠藤英輔氏に、web3に対する想いや、次なるサービス展望などについて語ってもらった。

プラスアルファのあたらしい価値提供を目指す

——2022年に親会社のNTTドコモがweb3領域に6,000億円を投じると発表しましたが、あらためてなぜNTTグループとしてweb3領域に注力することにしたかお聞かせください。

遠藤英輔(以下、遠藤)これまでNTTグループとして、通信インフラを支えてきたという自負がありますが、通信技術にweb3技術を絡めることで、プラスアルファのあたらしい価値を提供できるのではないかと思いました。

また、web2とweb3のような区切りでブロックチェーン技術について語られることがありますが、我々としては連続性のある技術であり、従来の技術ではできなかったことをさらに加速し、進めていくための手段だと捉えています。

ブロックチェーン技術を中心に価値の可視化、そして価値の移転でインフラを支えるだけでなく、プラスアルファの事業を創出できるはずだというのが最初の着眼点でした。

6,000億円という数字が注目されがちですが、安定したインフラ基盤を作っていくとなると、自然と規模が大きくなります。6,000億円という数字に意味を持たせたかったのではなく、腰を据えてweb3を絡めたインフラを作っていきたいという意思表示の発表でした。

皆様の生活に溶け込む生活インフラになるようなサービスを作るために長期的に取り組んでいきたいと思っています。


——今後も投資の可能性はあるのでしょうか?

遠藤我々はトークナイゼーションやトークンの力に価値を感じていますので、それに資する投資は今後検討していきたいと思っています。

また、ブロックチェーンに縛られる必要もないと考えており、たとえばトークナイゼーションやトークン化を進めていくためにAI技術が有効であれば、そこに対してアプローチを検討する可能性も十分あります。

 

——web3領域の現状の課題についてはどのように捉えていますか?

遠藤日本においてweb3は、まだまだ懐疑的な意見を持たれる方が多いのが現状です。実際、一部の技術者にしか理解できない技術であり、「web3=暗号資産」という考え方から、危険なイメージを持たれている方も多いというのが実態でしょう。

我々はそのイメージも含め払拭していきたいです。何より暗号資産以外にもweb3の思想であるトークナイゼーションだけでなく、ファンコミュニティの活性化といった情緒的な観点でも意義のあるユースケースを生み出すことが大切であると思っています。

我々は、web3の技術が「知らないうちに使われていること」が理想の形であると思っています。日常生活のなかで強く意識することなく、当たり前のように我々のサービスを使っていただく状態を作っていきたいです。


——通信インフラという部分ではNTTドコモというブランドが強い武器になるかと思いますが、NTT Digitalとしてどのように活動をしていこうと考えていますか?

遠藤NTTグループとしてこれまでに培ってきた技術と知見を持ち合わせ、秩序ある環境作りに貢献したいと考えています。

現状、web3の技術が先行し、法整備等が追い付いていないなかで、我々が目指す安心・安全なweb3体験を実現することは難しいと考えています。我々がトラストアンカーとしての役割を担い、ルール整備だけでなく、少しでもweb3に対する懐疑的な認識を変えていけたらと考えています。

我々自身、インフラとして皆様が使うサービスの裏側にいる存在であり、そのスタンスはweb3になっても変わらないです。web3においても、すでにあるアプリやサービスの裏側で「実はNTT Digitalのインフラが使われている」状況が望ましいと考えています。

また、現在我々はNTTグループとして9,800万(2023年12月末時点)にのぼる『dアカウント』ユーザーを抱えています。このユーザーの方々に対して、NTTグループのサービスとも連携し、我々のサービスを将来的に提供していきたいと思っています。


——web3領域に取り組まれている他企業もありますが、NTT Digitalとしてはどういったアプローチをしていくのでしょうか?

遠藤現状、このビジネスが抱えている状況が1995年頃のインターネットに近い状態ですので、競合という考えを持つよりもお互いが盛り上げていく方が意義のあることだと考えています。何よりグローバルにチャンスのある領域なので切磋琢磨しながら取り組んでいきたいと考えています。


「scramberry WALLET」は、web3領域の入り口として誰もが使いやすい操作性と安全性に注力し開発


——web3デジタルウォレット「scramberry WALLET」を3月にリリースされましたが、同ウォレットが他社アプリとどのように違い、さらにはどのような狙いから開発されたものなのか教えてください。

遠藤1番のポイントは、web3に触れたことがある方だけでなく、初めて暗号資産やNFTに触れる方にも長く使い続けていただくために、使いやすさや安全性に注力している点です。

特に操作性については、ユーザーがブロックチェーンを意識することなく、初期登録から暗号資産やNFTの購入までスムーズに行うことができます。たとえば、オンボーディングに関しても、電話番号によるSMS認証で簡単に初期登録ができ、バックアップ方法もweb3のリテラシーに依存しない形式にしています。

また従来のウォレットだと各チェーンに対しネットワークを手動で切り替える必要がありましたが、scramberry WALLETは自動で切り替わるだけでなく、どのトークンを保有しているかが一目でわかるようなUXを実現しています。

初めてweb3に触れる方にも優しく、いかにブロックチェーンを意識させない構造にできるか、社内で議論を重ね、現在の仕様となりました。


——「使いやすさや安全性に注力している点」に重きを置いていると感じたのですが、scramberry WALLETのどのような要素がそこにつながってくるとお考えですか?

遠藤いくつかあると思いますが、1番重要であるのはセキュリティ面だと思います。取引量の少ない暗号資産やNFTに対するアラート機能など、ユーザーにscramberry WALLETを長く使ってほしいからこそ、セキュリティの高い環境を常に整えています。

 

——ウォレットの普及でキャリアでの標準搭載というのは大きな強みになるかと思いますがscramberry WALLETはNTTドコモの標準搭載アプリ等として展開する計画などはありますか?

遠藤将来的にはその可能性もあると思っています。我々自身、インフラとして皆様が使うサービスの裏側にいる存在であり、そのスタンスはweb3になっても変わらないです。なので、web3においても、すでにあるアプリやサービスの裏側で「実はNTT Digitalのインフラが使われている」状況が望ましいと考えています。


scramberry WALLETのコンセプト「Digital Wallet for All」で安心・安全なweb3体験を提供


——今後検討されているサービスはありますか?

遠藤トークナイゼーションの基本として発行・流通・保管があり、この3つに関わるweb3のサービスを検討できればと思います。特に発行という観点では、NFTサービスやSTO(セキュリティトークン)などについて展開していく予定です。

また、scramberry WALLETの機能を法人のお客様向けにAPIとして提供することを予定しています。実際に直近では、イベント会社様とNFTを活用したファンコミュニティの活性化に向けたトライアルなどを実施する予定です。

web3の各機能を利用する際に必要となるウォレット機能をあらかじめ実装したスマートフォンアプリを使うことで、お客様にweb3を意識することなくあたらしいデジタル体験を提供していきたいと考えています。


—最後に今後の展望及び目標について教えてください。

遠藤インフラという領域において、これまで、そしてこれからも信頼を構築していくことは我々の使命であると思っています。その上で、web3というあたらしい思想や技術が、我々のサービスを通じて、皆様の生活に浸透していけばうれしいです。

我々も基盤提供を始め、web3の経済性や意義といったところにも意味を持たせられるようなサービスの提供を目指していきたいと思います。

また2024年はウォレットに始まり、市場に対してサービスを展開し、価値提供をしていく重要な1年になると思っています。ぜひ今後の動向についても注目していただきたいですね。



Profile

遠藤 英輔Eisuke Endo
株式会社NTT Digital 取締役CISO サービス開発部 Managing Director
NTT Digitalにおいてサービス開発およびセキュリティマネジメント領域の取締役CISO サービス開発部 Managing Directorを担務。2022年12月のNTT Digital設立時より取締役として事業企画に参画。



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